No. 80
Titre
Maigret et les témoins récalcitrants
邦題名
(直訳名)
メグレと口の固い証人たち
(メグレと扱いにくい立会人たち)
Rédaction Noland ; 1958.10.23
Éditions Presses de la cite #31; 1996.03 / ISBN : 2265-05766-5
邦訳本 長島良三・訳、河出書房新社#6、1983.12
ISBN: 4-309-70906-0
長島良三・訳、河出文庫、2000.06
ISBN: 4-309-46197-2

(←)
プレス・ドゥラ・シテ社版
1996年3月刊のもの
Edition: Presses de la Cité #31
1996.03


                 (⇒)
           河出書房旧版
       1983年12月刊のもの
(←)
河出文庫版
1983年8月刊



                 (⇒)
          河出文庫新装版
        2000年6月刊のもの

物語の季節
Saison
11月に入って3日目まだそれほどの寒さではないが、
気の滅入るような雲が垂れ込め、細かな雨の降る朝。
メグレは登庁しながらあと数年で毎朝ここに来なくなる
ことを思う。(On n'était qu'en novembre, le 3 novembre,
et il ne faisait pas particulièrement froid. Il tombait
seulement, d'un ciel bas et uniforme, une de ces pluies
... Chap.1)
メグレの状態
Son état 
前の晩に小雨の中を映画館から歩いて帰ったせいか、
朝起きた時に体調が悪く首筋が凝っているのを感じる。
メグレの定年退職はあと2年に迫っていた。彼はロワー
ル河畔のムンの田舎町に住むつもりでいて、夫人とその
生活について話をする。昔からのライバルだったコメリオ
判事はすでに退官しており、新たに判事に任官されたば
かりの若いアンジェロを相手に、昔ながらの自分のやり
方を黙認してもらえない不自由さを味わうことになる。
事件の発端
Origine
常習犯のコソ泥の起訴が決まったとき、電話が鳴って
殺人事件の知らせが届く。メグレが少年時代に食べた
ラショーム・ビスケットの経営者が撃たれて死んだという。
パリ東南の町外れの河岸に建つその家は、昔のままほ
とんど改修されていない埃っぽい役所のような建物だっ
た。メグレが不思議に思ったのは、その家の住人が、被
害に会ったことに対して怒りも悲しみもあらわにせず、
むしろ無気力な態度で静かに家の中にいたことであった。
確かに物盗りと思われる梯子と破れたガラス窓とが残
されていたが・・・
題名の意味
Ça veut dire
邦題では「口の固い証人たち」(les témoins récalcitrants)
となっているが、被害者の家の住人たちが皆そろって
捜査に対して気乗りのしない消極的な、言い方によって
は非協力的な態度でいることを指している。しかしもう一
つの解釈もある。それは新米の判事アンジェロが見習い
と称してメグレの取調べにぴったり付き添うのに加えて、
被害者の家族の顧問弁護士が訊問に立会って内容の
一つ一つに口を出すことになったことである。つまり「やり
にくい付添い人たち」ということもできる。(Une fois au moins
dans sa carrière, il avait dû travailler de la sorte devant
un témoin attentif à ses faits et gestes, sur une affaire
d'ailleurs infiniment moins désagréable.)

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 (あまり関わりのない人たち)
(Des gens dont on ne s'occupe pas beaucoup)
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
オルフェーヴル河岸 
quai des Orfèvres, 1er
ラ・ガール河岸
quai de la Gare, 13e
2 (背後に貼りついた若い判事と大げさな仕事をする
弁護士)
(Un jeune magistrat sur le dos et un avocat
qui ferait une affaire du tonnerre)
ラ・ガール河岸
quai de la Gare, 13e
3 (駅河岸のうらぶれた家)
(La maison délabré:e du quai de la Gare)
ラ・ガール河岸
quai de la Gare, 13e
オルフェーヴル河岸 
quai des Orfèvres, 1er
4 (青いポンティアックと赤いパナールのオープンカー)
(Une Pontiac bleue et une rouge Panhard décapo-
table)
オルフェーヴル河岸 
quai des Orfèvres, 1er  
フランソワ1世街
rue François Ier, 8e
マルブフ街
rue Marbeuf, 8e
5 (台所からの葱をゆでるいい匂い)
(Une bonne odeur de poireaux de la cuisine)
フランソワ1世街
rue François Ier, 8e
6 (高い椅子と暗い照明のアメリカ風のバー)
(Un de ces bars américains aux hauts tabourets
et à l'éclairage discret)
フランソワ1世街
rue François Ier, 8e
7 (もしシーツにすべてPとかいう文字が付いていたら…)  
(Si tous les draps sont marqués de la lettre "P"
ou …)
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
オルフェーヴル河岸 
quai des Orfèvres, 1er
8 (別の紙に書き写された質問)
(Les questions reportées sur une autre feuille) 
オルフェーヴル河岸 
quai des Orfèvres, 1er


メグレ警視の事件に明記された店舗・施設
(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
オー・コパン・デュ・ケ
Aux copains du Quai
セーヌ河岸沿いの船荷の積み降ろし場のカフェ。
quai de la Gare, 13e
アマゾヌ
L'Amazone
シャンゼリゼを奥に入ったキャバレー。女性客が多い。
Rue Marbeuf, 8e
シェ・マルセル
Chez Marcel
パレ・ロワイヤルの回廊にある老舗のレストラン
Galerie du Palais Royal, 1er
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の近くにあるブラッスリ。メグレも常連。
Place Dauphine, 1er

警察関係者の動向
Situation de collègue

ジャンヴィエ Janvier : 通報とともにメグレと一緒に車で現場に行く。イヴリー河岸の現場近隣の聞き込みをする。

リュカ Lucas : 現場の河岸から夜のうちにコルベイユに向かった荷物運搬船の乗組員をさがす。

ラポワント Lapointe : 徹夜の尋問で疲れた様子。本来は帰宅して休養するところが、事件の発生で居残り、連絡中継役として夜番になる。食品店の女主人を首実検に連れてくる。

トーランス Torrence : 被害者家族の車の所有関係を聞き込みに行く。

ボンフィス Bonfils : サン・マルタン運河で船荷を下ろしているオランダ船に目撃情報を聞きに行く。

ポール医師 Dr.Paul : 被害者の司法解剖をして、銃弾を取り出す。

ムルス Moers : 鑑識課員。被害者の身の回り品のリストに、部屋着がないことをメグレから指摘される。

ルグラン Legrand : イヴリー警察署の秘書官。

アンジェロ Angelot : 新たに任命されたばかりの若い予審判事。メグレのやり方に興味を持ち、訊問に密着する。また自ら訊問を取り仕切ろうとして、メグレは不機嫌になる。
事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire
グレゴワール・ブロー Grégoire Brau : シャノワーヌ(再犯者Le chanoine)とあだ名されたコソ泥の常習犯。留守の家を狙って長逗留して飲み食いをする手口が特徴。

レオナール・ラショーム Léonard Lachaume : 創業1817年の老舗、ラショーム・ビスケットの経営者。自分の部屋の中で物盗りに拳銃で撃たれて死んでいるのが見つかる。

アルマン・ラショーム Armand Lachaume : レオナールの弟。心臓を患う。

ポーレット・ラショーム(ズベール) Paulette Lachaume (Zuber) : アルマンの妻。実父は皮なめし商人。

マリエル・ラショーム(ドナ) Marielle Lachaume (Donat) : レオナールの妻。8年前に死去。

ヴェロニク・ラショーム Véronique Lachaume : レオナール兄弟の妹。34歳。実家を出てシャンゼリゼ近くに住み、キャバレーで働く。

ジャン=ポール・ラショーム Jean-Paul Lachaume : レオナールの息子。12歳。

フェリックス・ラショーム Félix Lachaume : 78歳。ラショーム・ビスケット社の社長の地位を保っているが、ほとんど隠居状態。

カトリーヌCatherine : ラショーム家で40年以上働いている召使い。小柄で猫背の老女。

ジュスタン・ブレーム Justin Brême : ラショーム・ビスケット社の会計係。

アンドレ・ラデル André Radel : ラショーム家の顧問弁護士。

フレデリック・ズベール Frédéric Zuber : なめし皮業者。死期を目前にして財産を娘のポーレットに譲る。

ゴードワ夫人Mme Gaudois : ナショナル橋のたもとの乾物屋の女主人。雨の夜、赤いスポーツカーを目撃する。

メラニー・カシューMélanie Cacheux : ラショーム家の隣に住む老女。普段の付き合いはないが、事件当夜に家の前を通りがかる。

ルーロー Loureau : 新聞記者。メグレの駆け出しのころから警視庁の廊下をうろつく。記事のきっかけだけを与えれば自分で調べ上げて記事にするベテラン。

ボワネ夫人 Mme Boinet : ヴェロニクの住むアパルトマンの管理人。夫はタクシーの運転手。

ジャック・センヴァル Jacques Sainval : 44歳。広告エージェント。赤いスポーツカーを乗り回す。ヴェロニクの愛人。


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