No. 66
Titre
Maigret, Lognon et les gangsters
邦題名
(直訳名)
メグレと生死不明の男
(メグレとロニョンとギャングたち)
執筆記録
Rédaction
1951年9月、米国コネティカット州レイクヴィル
「シャドゥ・ロック農場」にて完成
Shadow Rock Farm, Lakeville ;
Connecticut, U.S.A: 1951.09.08
参照原本
Éditions
プレス・ドゥ・ラ・シテ社版 1962年3月刊
Presses de la Cité; 1962.03
邦訳本 長島 良三・訳、講談社文庫、1981年1月刊

(←)
プレス・ド・ラ・シテ社版
1962年03月刊のもの
Edition: Presses de la Cité;
1962.03

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           講談社文庫版
        1981年1月刊のもの
        (画像:淙穂さんから
         提供されました)

物語の季節
Saison
11月18日(木)冬の始まりを思わせる冷たい長雨が降り続く。首筋から
入り込み、靴底から沁みこみ、帽子のひさしから大きな水滴となって落ち
る独特の長雨である。(Il pensait à la pluie, à cette pluie particulière
qui précède les vrais froids de l'hiver et qui a le don de s'insinuer
dans votre cou, à travers vos chausseurs, de couler en grosses
gouttes de votre chapeau…Maigret nota qu'on était le jeudi 19
novembre.: Chap.1er)
暦上で日付と曜日が合致するのは1936年。米国で禁酒法が廃止され
たのは1933年であり、パーテンが「その前か後か」を気にする場面があ
るので、ほぼこの時期をあてても不自然ではない。(- C'était avant ou
après la prohibition? : Chap.3)
メグレの状態
Son état 
いつも風邪をひいているロニョンから移されたか、メグレも何度か洟をか
み、ヒリヒリしている。目つきもぼんやりして熱っぽい。(Maigret s'était
déjà mouché une fois ou deux. Le nez lui picotait. Les paupières
étaient chaudes. Avait-il attrapé le rhume de Lognon? : Chap.4)
前半でやられっ放しのメグレたちが後半に目覚ましいアクションを繰り
広げる。メグレの銃の腕前と格闘シーンは見ものだ。
事件の発端
Origine
 窓外に降り続く冷たい雨をながめながらメグレが報告書を書いていると
ロニョン刑事の夫人から電話が入る。自宅にギャングたちが押し入って
家捜しをして、もう二度目だという。彼らはフランス語がわからず、通訳の
男が夫人に問いつめて、ロニョンを捕まえようとしているのだ。メグレはす
ぐ車で駆けつけるが、当のロニョンは昨夜から家に帰っていない。夫人
は病気で寝たきりなので身の回りの世話はこれまでロニョンがやって
いた。ほどなくしてロニョンから電話が入り、メグレは本庁で詳しい話をき
くことにする。
 それによると彼は、深夜コカインの密売人の張り込みをしていたが、そ
のカフェの目の前に車が止まって、ぐったりした男が投げ出されたのだ。
急いで電話をしようとカフェに行き、振り返るとまた車が来て、その男を乗
せなおして逃げ去ったという。最初のナンバーを覚えていたロニョンは、
保管先のガレージを突き止め、ワグラム・ホテルに長期滞在しているアメ
リカ人の車だとわかったが、逆に数人の男たちに自分の家を荒されるこ
とになったのだ。
 ニューヨークにいるFBIのマクドナルド捜査官に照会したところ、名うて
のギャングたちだということがわかった。彼らはなぜ海を渡ってパリまで
来て、厄介な事を起こすことになったのだろうか?
表題の意味
Ça veut dire
あらゆる意味で犯罪のプロとも言うべきマフィア系のアメリカ・ギャング
たちがパリに乗り込んできた。手がかりとなるパリのイタリア人たちは、
フランス警察の相手にならない数段上手の彼らの格(classe)を口にす
る。(Ce ne sont pas des choses pour la police française; Chap.4) 
メグレを怒らせたのは「ギャング」という言葉までもが、というわけではな
かったが、(Il n'y avait pas jusqu'au mot gangster qui ne le mit en
rogne; Chap.4) フランス警察のプライドからしても、何としてもやっつけ
てやりたいと静かな闘志を燃やすが、常に先手を取られてしまって・・・

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 メグレが病気のロニョン夫人とギャングたちの
ことを気懸りに思うこと。
Où Maigret est contraint de s'occuper de
Mme Lognon, de ses infirmités et de ses
gangsters.
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
コンスタンタン・ペッカー広場
place Constantin Pecqueur, 18e
コランクール街 rue Caulaincourt, 18e
ラ・ロシュフコー街
rue de La Rochefoucauld, 9e
フレシエ街 rue Fléchier, 9e
シャトーダン街 rue de Chateaudun, 9e
サン=ラザール街 rue Saint-Lazare, 9e
ノートルダム・ド・ロレット街
rue de Notre-Dame de Lorette, 9e
マイヨ門 porte Maillot, 17e
ワグラム通り avenue de Wagram, 17e
2 あまりお勧めできない個性ながら、ロニョン刑事
はきちんとした男であるのを示すこと。
Où, bien qu'il soit question de personnages
peu recommandables, l'inspecteur Lognon
tient à montrer qu'il est un homme bien
élevé.
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
アカシア街 rue des Acacias, 17e
マク=マオン通り avenue Mac-Mahon, 17e
テルヌ通り avenue des Ternes, 17e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e
3 ポツォがいくつかの質問に、とりわけ素人仕事に
対して意見を述べること。
Où Pozzo donne son avis sur plusieurs ques-
tions, en particulier sur l'amateurisme.
アカシア街 rue des Acacias, 17e
フォブール・サン=トノレ街
rue du Faubourg Saint Honoré, 17e
カプシーヌ街 rue des Capucines, 2e
4 小学生扱いが相変わらず話題になること、そして
メグレがいい加減聞き飽きたと感じ始めること。
Où il est encore question de la petite classe
et où Maigret commence à en avoir assez.
カプシーヌ街 rue des Capucines, 2e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ブリュネル街 rue Brunel, 17e
アカシア街 rue des Acacias, 17e
5 バロンとかいう貴族風の名前の刑事が追跡して
いるうちに、メグレは映画に行ってしまうという失
策をする。
Où, pendant qu'un certain Baron se met en
chasse, Maigret a le tort d'aller au cinéma.
カプシーヌ街 rue des Capucines, 2e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e
ボンヌ・ヌーヴェル大通り
boulevard de Bonne-Nouvelle, 2e
リシェ街 rue Richer, 9e
フォーブール・モンマルトル街
rue du faubourg Montmartre, 9e
6 誰もが厳しく立ち振る舞うこと、あるいはその格差
があること
Où tout le monde se met à jouer dur et où
il y a de la casse
フォーブール・モンマルトル街
rue du faubourg Montmartre, 9e
グランジュ・バトリエール街
rue de la Grange-Batelière, 9e
ジュフロワ小路 passage Jouffroy, 9e
ドゥルオー街 rue Drouot, 9e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
7 メグレが自分の番として逆襲をすること、あるいは
深刻な厄介事に直面しそうになること
Où Maigret attaque à son tour et où il
risque de s'attirer de serieux désagrements
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ブリュネル街 rue Brunel, 17e
*メゾン=ラフィットMaisons-Laffitte
(パリ西郊外 21km)
ポルト・マイヨ Porte Maillot, 17e
8 ある刑事は見つけたことをどうしても思い出そう
とすること
Où certain inspecteur s'efforce de se souvenir
de ce qu'il a découvert
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
バティニョル街 rue des Batignoles, 17e
レンヌ街 rue de Rennes, 6e
9 メグレがともかくウィスキーを一杯受けること 
Où Maigret accepte malgré tout un verre de
whisky
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ムッシュー・ル・プランス街
rue Monsieur-le-Prince, 6e
サン=ミシェル大通り
boulevard Saint-Michel, 6e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
ホテル・ワグラム
Hôtel Wagram
出張ビジネスマン向きのホテル
ワグラム通り avenue de Wagram, 17e
シェ・ポツォ
Chez Pozzo
裏がありそうなポツォが経営するイタリアン・レストラン
アカシア街 rue des Acacias, 17e
マンハッタン・バー
Manhattan Bar
アメリカ人観光客が出入りする米国スタイルのバー
カプシーヌ街 rue des Capucines, 2e
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の近くにあるブラッスリ。メグレも常連。今回はぼんやりとサ
ンドウィッチを2本平らげる。
ドーフィヌ広場 Place Dauphine, 1er
ブルターニュ・ホテル
Hôtel de Bretagne
長期利用の観光客向けの安宿
リシェ街 rue Richer, 9e
バー・デュ・ソレイユ
Bar du Soleil
繁華街一帯の街角のバー。いつも人が混んでいる。
フォーブール・モンマルトル街 rue du faubourg Montmartre, 9e
ラ・クーポル
La Coupole    *
実在する老舗のカフェバー。
モンパルナス大通り boulevard Montparmasse, 14e
オー・ボン・ヴィヴァン
Au bon vivant
森の中にある居酒屋。競馬の騎手たちの溜まり場。
メゾン=ラフィット Maisons-Laffitte

警察関係者の動向
Situation de collègue
ジャンヴィエ Janvier : 船で入国した外国人のリストを調査する。当直として電話の盗聴をかける。

リュカ Lucas : ロニョン刑事の運ばれた病院へ駆けつける。トーランスと交代でイタリア・レストランの張り込みにあたる。

トーランス Torrence : ロニョンと交代でイタリア・レストランの張り込みにあたる。電話番号の局番から容疑者の隠れ家を探し当てる。

ムルス Moers : 鑑識課員。メグレの押収した電話メモ帳に残された痕跡を調べる。電話番号の一部が判明する。

ロニョン Lognon : 9区警察署第2分署の刑事。ギャングにつきまとわれて自宅を荒される。張り込みの途中で拉致されて殴られ、大怪我をする。

ジミー・マクドナルド Jimmy MacDonald : アメリカFBIの捜査官。アメリカのギャング団の一味に関する資料を送ってくる。また詳細な情報も電話でメグレに提供する。

ヴァシェ Vacher : 当直の刑事。メグレが映画から帰ったところに連絡する。

ボンフィス Bonfils : 第3分署の刑事。

ニコラ Nicolas : 第3分署の刑事。アーケードで張り込みをする。

ダンヴェール Danvers : 第3分署の刑事。ニコラ刑事と一緒に張り込みをする。
事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire
ビル・ラーナー Bill Larner (スィート・ビル Sweet Bill): 実業家としてパリのホテルに滞在している男。

チャーリー・チナグリア Charlie Cinaglia : アメリカから来たギャングの一人。昔ボクサーとして鳴らした男。

トニー・チチェロ Tony Cicero : アメリカから来たギャングの一人。

ポツォ Pozzo : 凱旋門の近くでニューヨーク風のイタリア・レストランを経営。

ルイジ Luigi : オペラ座のそばでアメリカン・スタイルの「マンハッタン・バー」を営んでいる。ナポリ出身。

アドリエンヌ・ロール Adrienne Laur : ベルギー出身のナイトクラブのストリップ・ダンサー。ビル・ラーナーの愛人。

マスカレリ Mascarelli (スロッピー・ジョー Sloppy Joe): ギャングたちが追いかけている男。

ジョン・パーキンス John Perkins : カナダから新婚旅行で来た男。フランス語が話せない。

マド Mado : パーキンスの妻として同宿していた女。警察に通報後、別の男に連れ去られて姿をくらます。

リュシル Lucile : ブルターニュ・ホテルの部屋係の女。

ジャン Jean : ブルターニュ・ホテルのナイト・マネージャー

ハリー・ピルズ Harry Pills : アメリカン・バーに出入りする謎のアメリカ人金髪青年。

ヘレン・ドナユ Helen Donahue : メゾン・ラフィット市外の森の中の居酒屋を営むアメリカ女。

デデ・ドゥ・マルセイユ Dédé-de-Marseille : 南仏出身の賭博師。用心棒に狩り出される。


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